
2025-12-16
この記事は,映画「僕らの七日間戦争」のレビュー記事です.ネタバレを含みますので,ご注意ください.
「インチキな大人に宣戦布告!!」青葉中学1年A組の生徒8人が、ある日突然、姿を消した!?あわてふためく大人達。しかし彼らは町外れの廃工場に立てこもっていた。先生達は連れ戻そうとするが、生徒達は奇想天外な作戦でこれを撃退する。ついに怒った大人達は機動隊を出動させるが...。果たしてこの勝負、どちらが勝つか?迎え撃つ子供達の運命は?史上最大のイタズラが今、爆発する! (C) 1988 角川映画
僕は小学校の頃は読書家だったので,とにかくいろいろな本を読んでいました.とは言ってもまだ小学生なので,青い鳥文庫や角川文庫の本を特にたくさん読んでいました(はやみねかおる先生の怪盗クイーンシリーズはいまだに追ってるくらい大好き).
そして時代は令和(僕は22歳).YouTube巡回をしていると,映画「僕らの七日間戦争」の文字があった.思わずクリックしてしまったことは仕方ないでしょう.だってずっと好きだった「ぼくらの」シリーズの一作が映画として見られるのですから.
ですが,正直あまり期待はしていませんでした.理由は2つ.
1つ目は,サムネイルがあまりにも古かったためです.見るからに昭和の時期に撮影されたことを雄弁と語るその画像は,その映画のクオリティがきっと低いのだろうということを僕に示唆してきました.
2つ目は,映画が実写だという点です.令和を生きる多くの人々は,これだけで,「なるほどなぁ」という気持ちがわかると思います.これまで本を読むことで,自分の脳内に構築してきたその世界を,実写化によってぶち壊されてきた人々はかず多くいるのではないでしょうか.僕もその一人です.
しかし,そのような理由を持ってしても,自分のワクワク感を止めることは叶いませんでした.それだけ,この映画に無意識に願いを込めていたのかもしれません.きっと面白くあって欲しいと.その気持ちは,あきらめの気持ちと五分五分だった気がします.
視聴した結果.
いやー,面白かった!!!!!
すっごい面白かった!!!!!!!!
これだけたくさんのときを重ねてきて,未だ色褪せない作品の良さと言うものを感じることができた気がします.
まずは中学生同士の掛け合い.「確かに集団で集まったらこんな感じのわちゃわちゃした会話になるんだろうなぁ」という想像を掻き立ててくれるザワザワ感が心地いい.そんな中でも,委員長が話すときなど誰かがリーダーシップを発揮している場面では,"集団の中における静けさ"というものがきちんと表現されていたと思います.ちょっとした息遣い.衣擦れ.我慢できない身じろぎが何かを擦る音.それらが絶妙にこの場面を彩っていました.
次はアクションシーン.これに関してはびっくりするような新しい発見がありました.近年でよく見られる漫画やアニメは,きっとダイナミックでウルトラでスーパーなアクションをしていることが多いと思います(その煽りを受けてか,微妙な作品も増えてきたような気もしますが).それに対して,この作品ではとにかく"リアルさ"を強く追求しています.これは現代作品では全く見なくなってしまった,生々しさです.あまり具体的なシーンは挙げないつもりなのですが,ここでは一つだけ.最も顕著であったのは「英治と宏」のケンカするシーンです.お互いに胸ぐらを掴み合った後,押し倒したり,テーブルの上を転げ回ったり,最後には友達に引き離された後もお互いに睨み合うところまで.圧倒的に"中学生のケンカ"というものの臨場感を強く感じます.というか普通に良すぎ.
最後は大人との最後のバトルシーン.もう原作の記憶がないので,どこまで原作再現されているかわかりませんが,初見で見た僕の所感だけ語ります.
すっごい好きでした.おそらく結構な原作再現はなされているんじゃないでしょうか.そう感じさせるだけの勢いがこの作品には合った気がします.
そう,「勢い」.今この記事を書きながら,すごいしっくりくる言葉がこれでした.大人が来た!どうしよう!ならこれで対処しよう!次はどうしようか?ならこうしよう!という,ピンチをひっくり返すたくさんのアイデアを見た気がします.嫌いな先生を檻に入れたり,緑色の網で包んで吊るすシーンとかはかなり見応えもありました.
正直ほとんどありません.今は視聴後の清涼感のままに書いているので,もしかしたらこの後にまた新しく浮かぶかもしれませんが,ここでは一つだけ.すっっっごい面白い流れで最後まで来たのに,いっちばん最後の終わり方があまりにもあっさりとしすぎていたのが信じられませんでした.
というのも,ラストはざっくり言うと「大人たちとの最後の戦いに勝てた!やったぁ!」という感じだったのですが,そのあとの大人たちとのわちゃわちゃは全く描かれておらず,学校に復帰した際の子供たちの「また悪いことするぜ!」で終わってしまいました.
記憶が定かではないですが,原作では英治のお父さんと最後話すシーンありませんでしたっけ?これでは,英治のお父さんがただ会社を早引けしただけの謎ムーブおじさんになっちゃいますよ.
とにかく,最後の戦いのあとにもう少しだけ時間をとって,その戦いの余韻を感じたかったです.英治のお父さん,英治のことを引っ叩いた後によくやったって頭を撫でてやってよ.
めっちゃ面白かったし,誰にでも勧められる良作だと思います.これを見たら原作も多分読みたくなるような,そんな作品になっていました.ぜひ読んでみてください.
ラストシーンだけは許さないからな!!!